天皇御在位60年記念金貨 27年経過してやっと額面と金(きん)価値同等に

 アベノミクス効果による円安で円建て金価格は1月11日ついに小売価格で5000円を突破したことは、1月14日付けの本ブログでも紹介したが、本日も5000円台を維持している。
 金価格が5000円を超えたことによって、私が思いだすことは日本政府が苦い経験をした「天皇御在位60年記念金貨」のことである。
 昭和60年(1985)に当時の中曽根康弘内閣の竹下登大蔵大臣が昭和天皇の在位60年を祝うために、記念硬貨を発行することを決定し、昭和61年に1000万枚、62年に100万枚の「天皇御在位60年記念金貨」を発行した。この金貨は額面10万円で金量は純金で20gであった。
 問題は当時の金価格は1g約2000円で、「金」の価値としては、40000円程度だったので額面とは大きな差があり、この差を狙って大量(10万枚以上)の偽造品が海外から日本に持ち込まれ換金された。(詳細に関しては、本ブログで紹介した「『金』を薦めてよかった」の中で「政府発行の金貨と偽造問題」で取り上げているので、下記参照)

 同金貨は発行枚数が大量だったために現在でもプレミアムはついていないので、仮に同金貨を現在発行するとしたら、「金」の価値のほうが額面より高いので、20gの「金」を使用して偽造品を製造しても採算はとれない。
 また、同金貨を所有している人たちにとっては、額面の10万円で使用することは抵抗があるが、日本の貨幣法の下では、現行通貨を鋳潰すことは禁じられているので、地金商などに金地金として売却することはできない。
 したがって、金価格が更に上昇し、プレミアムがついてくれば額面として使用するより、コイン商などで売却した方が得策となるだろう。
 いずれにして、金価格の高騰によって、「天皇御在位60年記念金貨」の話題が再び浮上してくることは間違いない。
 いま、私が一番懸念するのは、今度は逆に海外に同金貨が持ち出され、海外で鋳潰されることである。

「参考」

   政府発行の金貨と偽造問題

昭和61年11月、日本では約半世紀ぶりに政府が「天皇御在位60年記念金貨」という金貨を発行した。この金貨は額面が10万円であり、量目は純金で20グラム(当時の金価格で約4万円)であった。しかも発行枚数が1000万枚であったので、金量にして200トンと大量なものであった。
日本では、明治4年(1871年)から昭和7年までの61年間に発行された金貨は8684万枚で、使用した「金」は約1000トンであるから、いかに「天皇御在位記念金貨」が大量なものかがわかる。
政府はこの金貨を発行することによって6000億円の税外収入が得られた上に、この「金」の調達はアメリカから行なったので、ドル減らしにも一役買ったことになる。
問題は金貨の額面と「金」の価値との間に大きな差(約6万円)があったので、私は模造品が出回ることを懸念し、そのことを広報室がマスコミ向けに毎月発行していた情報誌の誌面上でも取り上げた。
この悪い予感は的中し、発行後3年を経過した平成2年(1990年)の年初から天皇御在位60年記念金貨大量偽造事件が発生し、各報道機関を通じて一斉に報道された。
 思わぬところでこの偽造問題を取り上げた我が社の情報誌の誌面が、マスコミの注目を集め、新聞・テレビ等でいろいろな角度で紹介された。
なにゆえに大量の模造品が発生したかを究明する前に、世界で今までに発行された金貨を大別すると、次の四通りとなる。
①額面金額は入るが、ほぼ「金」の価値と同程度の金貨
②額面金額は入るが、「金」の価値はそれよりはるかに低い金貨
③額面金額は入るが、「金」の価値はそれよりはるかに高い金貨
④額面金額が入らない金貨
以上①~④の金貨について概略を説明すると、
①の範疇に入るものは、金本位制時代の通貨として発行された金貨である。例えば、明治4年と明治30年に発行された20円金貨の価値を計算してみると、明治4年に発行された20円金貨は、品位1000分の900で、量目は33.333で、明治初期の金価格は1グラム17銭であったので「金」の価値は20円となる。一方、明治30年に発行された20円の金貨は、品位1000分の900で、量目は16.666となり、明治30年の金価格1円34銭で計算すると、やはり「金」の価値は約20円となる。このように両方の金貨とも、額面と「金」の価値は同程度となっている。したがって、明治4年に発行された20円金貨は、明治30年以降に発行された20円金貨の額面の2倍で適用され、40円で使用された。
②の範疇に入る金貨が、問題となった天皇御在位60年記念金貨や、オリンピック開催国などが発行する記念金貨などである。
③の範疇に入る金貨は、オーストリア造幣局発行のウィーン金貨や、カナダ造幣局発行のメイプルリーフ金貨などである。
これらの金貨は、投資用として大量に発行され、低率のプレミアムであり、その日の金価格にスライドして価格が決まる地金型金貨である。
④の範疇に入るのが、南アフリカ造幣局発行のクルガーランド金貨である。クルガーランド金貨には額面が入っていないので、毎日の金価格に連動して額面がきまることになる。この金貨は、昭和60年10月から輸入が自粛されているので、現在は国内に退蔵されている範囲内で流通している。

・ 各種金貨と偽造の問題
前述した①のように額面金額と「金」の価値が同程度の金貨は、日本では明治4年から昭和7年までに20円、10円、5円、1円の5種類の金貨が発行され、その総数と使用された金量は前述した通りである。しかし、現在では稀少なものとなっており、1枚が何百万円という高価なものもあり、仮に偽造品が出回った場合には発覚されやすいので、偽造品は数少ない。
前述した③のように額面金額より「金」の価値がはるかに高い地金型金貨に関しては、製造国のプレミアム率が低く、仮に偽造しようと思っても、地金の調達費用、加工費、金利などを負担すると採算が合わない。したがって、いまだに偽造された金貨は出回っていない。
やはり、最も偽造されやすい金貨となると、前述した②のように額面金額が「金」の価値よりはるかに高い金貨となる。

・ 額面金額が「金」の価格よりはるかに高い金貨は偽造されやすい
天皇在位60年記念金貨は、額面が10万円であり、量目は純金で20グラムであるので、当時の「金」の価値としては約4万円であった。1989年に米国で発行された議会200年の記念金貨は額面が5ドル、品位1000分の900、量目は8.36グラムで、その当時、未使用のもので8万7000円ぐらいで売られていた。この場合「金」の価値は約3万6000円で、購入価格に対する「金」の価値は、両者とも半分以下で似通っている。
しかし、天皇在位60年記念金貨は、額面に対し「金」の価値は半分以下なのに対し、米国の議会200年記念金貨は、額面より「金」の価値ははるかに高い。
この二つの金貨を比較した場合、偽造金貨を作る上での魅力に大きな違いが出てくる。すなわち、議会200年の偽造金貨を製造したとしても、売らなければ何の妙味もないことになる。一方、天皇在位60年記念金貨の場合は、偽造金貨として発覚しない限り、10万円のお金として買い物もできれば預金することもできるので、売らなければならないというリスクは全くない。現に、この天皇在位60年記念金貨偽造事件も、コイン商が顧客に販売するという目的で輸入されたものではなかった。
額面金額の方が「金」の価値よりもはるかに低い米国の記念金貨の場合は、通貨として利用されることはまずないので、金価格が値上がりした場合は「金」の価値として売却されることになる。
米国の連邦議会は、1986年にニューヨークの自由の女神立像建立100年を記念して記念金貨を発行した際に、金貨を自由に鋳潰すことの法律も承認した。日本の貨幣法では、現行通貨を鋳潰すことを禁じているので、仮に額面金額より「金」の価値の方が上回ったとしても、プレミアム付でコイン商を通じて販売するか、額面金額で使用する以外に換金の道はない。

・発行枚数が多い場合、偽造品が出回りやすい
天皇在位60年記念金貨は、昭和61年に1000万枚、62年に100万枚と、合計で1100万枚発行されている。この数は、短期間内の記念金貨の発行枚数からすると群を抜いている。(前述の米国議会200年金貨は100万枚、自由の女神金貨は55万枚)
天皇在位60年記念金貨で偽造された金貨は、全て1000万枚発行された昭和61年ものとなっている。仮に100万枚に限定されて発行された記念金貨の中に10万枚の偽造金貨が作られたとしたら、これはすぐに発覚する。

 
 

 

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